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歯止めがかからないオフィス空室率の上昇、ITのメッカ渋谷の行きつく先を想像する

 都内のオフィス空室率は上昇が止まりません。オフィス仲介の三鬼商事が発表した6月の東京ビジネス地区(都心5区・千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィス平均空室率は6.19%と、2014年7月以来の高さに達しました。6月は新築ビルが高稼働で竣工したものの、一部で募集面積を残し、既存ビルでも大型解約の影響が出ていたことなどから、東京ビジネス地区全体の空室面積はこの1カ月間で約2万5千坪増加しました。

 空室率を新築と既存でわけてみると、新築ビルは9.85%と、2018年1月以来の高水準となりました。大規模ビル2棟を含めた4棟が竣工し、一部で満室稼働となりましたが、募集面積を残したビルもあったため空室率は上昇しました。一方、既存ビルの空室率は6.12%と、2014年6月以来の高水準を記録しました。

 空室率を地区別にみると、港区は8.05%と5区の中で突出して高い水準にあり、次いで渋谷区(6.68%)、新宿区(6.32%)、中央区(5.41%)、千代田区(4.51%)と続きます。港区は、大企業のオフィスが多いことで知られますが、在宅勤務の拡大で大企業の多くが出社率を低下させ、オフィスを縮小する動きが強いことを示唆します。

 平均賃料は、1坪(3.3平方メートル)あたり2万1160円と11カ月連続で低下し、2019年3月以来の低水準に落ち込みました。地区別では中央区が1万9002円と最も低いですが、前月とほぼ同じ水準です。一方、渋谷区は2万2929円と、前月から264円(前月比1.14%)も下がり、千代田区(2万2753円)の水準に近づいています。

tinryo_mikishouji
https://www.e-miki.com/market/tokyo/

 オフィスの空室率や賃料の先行きについては、見方が二つに分かれています。このままオフィスの空室率は上がり続け、結果として賃料も下落傾向が続くとする見方と、オフィス空室率の上昇や賃料の下落は年内には歯止めがかかるという見方です。

 おそらく大企業のオフィスに対する考え方は、短期間で収れんすることなく、長い時間をかけた試行錯誤が続くと予想されます。試行錯誤が続くのであれば、一気にオフィスを減らすことは、リスク管理の点からみて好ましくなく、使わないかもしれないけどオフィスを確保する動きも続くように思われます。

 一方、ベンチャー企業や中小企業といった経営資源が比較的乏しい企業は、大企業のように余裕がありませんので、オフィスを手放し、オフィスを小規模のままにするでしょう。経営資源に乏しい企業が利用するオフィスは、大企業と違い小規模な物件が大半でしょうから、小規模物件の空室率は、これからも上昇し、結果として賃料も下落すると予想されます。

 以前は都心5区の中で最も高い賃料水準にあった渋谷区で賃料下落が続き、ついに千代田区とほぼ同じ水準になったのは、この予想をもっともらしく思わせる事実の一つと言えそうです。渋谷区は、IT業界に属するベンチャー企業や中小企業が多いことで知られているからです。

 渋谷区の賃料は空室率が6%台半ばを超えたこともあって、今後も下がり続ける可能性が高いのではないでしょうか。その結果、渋谷区の物件オーナーは、家賃収入の減少に歯止めをかけるべく、シェアオフィスやワークスペースに物件を貸す可能性も考えられます。

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