新型コロナが否定する教育の外部化・外注

新型コロナが否定する教育の外部化・外注

 安倍首相は、全国の小中学校や高校などを対象に3月2日から臨時休校とするよう要請してから2ヶ月以上が経ちました。緊急事態宣言が解除された地域の一部では、5月18日から学校を再開する意向を示していますが、特定警戒都道府県に指定されている地域などでは、5月末まで学校を休校する方針が示されています。このため、多くの学校は、約3ヶ月間、休校が続く見通しです。

 休校が3ヶ月近くも続くことから、各地域の教育委員会は、土曜授業の実施、夏休みの短縮、行事の見直しなどによって、授業数を確保し、学習の遅れを取り戻そうとしています。また自宅などでオンライン学習を活用する意向を持つ教育委員会も多いと報道されています。子供の保護者は、教育委員会が正常化に向けて動いていることもあって、そう遠くない将来に、学校教育が正常化されると期待しているかもしれません。

 しかし、東京都を含め日本全国で緊急事態宣言が解除され、学校すべてが再開したとしても、治療に使えるワクチンの開発・普及が進んでいない以上、新型コロナウイルスが終息に向かうとは考えられません。むしろ緊急事態宣言の解除により、人の動きが以前と同じようになれば、新型コロナウイルスの感染が再び広がると考えた方が自然でしょう。

 学校の多くは、子供達を1カ所に集め教師の話を聞かせる、という形式で教育サービスを提供します。一方、学校にやってくる子供や教師は、誰もが新型コロナウイルスに感染していない、と言い切れません。感染しているかもしれない子供達や教師達が1カ所に集まり、長時間の会話が生じる以上、学校は感染クラスターの有力候補です。このため、たとえ学校が再開されたとしても、新型コロナウイルスの感染再拡大が確認されれば、学校は再び休校せざるを得ないでしょう。

 休校リスクを抱えている学校が、学習の遅れをなくすことを目指すのであれば、土曜日であっても夏休み期間中であっても、開講中は可能な限り授業をするでしょう。また、仮に学校が再び休校となれば、学校は、子供達に対し、宿題の郵送やオンラインでの授業などを用いて、自宅で学習することを求めるでしょう。

 このときに問われるのは、子供達ではなく保護者の姿勢です。これまで子供の教育環境は、学校を中心とする自宅とは異なる場所を基本としていました。しかし、学校が休校となる期間が長くなればなるほど、学校から送付される宿題(課題)を使い、オンラインで授業が提供されるなど、子供の教育環境は自宅が基本となります。

 過去100年以上、保護者の多くは、子供の教育環境が外部であることを前提としてきました。その前提のもと、保護者の多くは、子供が学校などの外部環境に身を置く間に、働きに出て、より多くの所得を得るようになりました。

 こうした保護者の動きは、「外部化」や「外注」という言葉で説明することができます。保護者は、子供への教育を外部化・外注することで、生産(勤労)効率を高め、より多くの所得を得てきた、と言えます。

 第二次世界大戦後、教育の外部化・外注は、時間とともに強化されました。学校だけでなく、塾や予備校と言った民間教育サービスを利用することは、教育の外部化・外注を強化するわかりやすい一例です。

 しかし、こうした教育の外部化・外注は今後、難しくなり、外部化・外注のためのコストは大きく上昇するでしょう。新型コロナウイルスの感染リスクを抑えるために、学校はこれまでと同じ規模で、子供達を長時間、受け入れることができないからです。これは、教師の生産性を低くすることにつながり、より多くの教師、つまり、より多くのコストが必要となります。

 自宅にいる子供の学習効果を上げるために、いわゆる家庭教師やお手伝いさんを利用することも考えられます。共働き世帯のように、保護者が日中、自宅にいない家庭では、保護者に変わり自宅にいる子供の面倒を見る人のニーズは高まると予想されます。ただ、ニーズが高まれば高まるほど、家庭教師やお手伝いさんのコストは、これまで以上に大きくなります。

 教育の外部化・外注が難しくなる、もしくはコストが上昇することで、保護者の働き方や生き方、考え方にも変化が生ずるでしょう。すでに、休校が続くことで子供達は自宅にいるようになり、仕事のために外出することが難しくなっている保護者は増えています。

 教育の外部化・外注のコストが上昇することで、働くことで得られる所得よりも、教育の外部化・外注のコストのほうが大きくなることも十分にありえます。この場合、保護者は、働くよりも、教育の外部化・外注をあきらめ、教育の担い手となるほうが、経済合理性が高まります。以前は、保護者が子供に付き添い、学校から与えられた宿題・課題への取り組みをサポートすることは珍しいことではありませんでした。

 保護者の別の選択肢は、子供に与えていた教育水準を落とすことです。教育の外部化・外注が難しくなったのであれば、子供に与える教育を削減することで教育に関わる負担を減らすことは可能です。保護者がいない間、子供達は自宅でテレビやスマホなどで動画をみたり、ゲームをさせることで時間を潰させるのは一つの方法でしょう。もしくは、たとえ保護者が自宅にいても、子供達と一緒に動画やゲームを楽しむのも可能です。

 当たり前とされてきた教育の外部化・外注が難しくなったことで、保護者の対応は多様化するでしょう。そして多様化の結果、いわゆる教育格差は、さらに大きくなると予想されます。教育格差が広がる社会で、どのようなことが起きるのかを、今のうちから想像しておくのも悪くないかもしれません。

新しいワークスペース WorkOn会員登録はコチラ【公式】

働き方カテゴリの最新記事