日本経済新聞社が発行している消費と流通、マーケティング情報に特化した専門紙である日経MJは、外食企業が相次いで「おひとり様」需要に照準を定めた戦略を打ち出していると報じました。同報道では、すかいらーくホールディングス(HD)のファミリーレストラン、ダイニングイノベーション傘下の焼肉ライク、日本ピザハットが取り上げられています。
すかいらーくHDは、2022年度末までに「ガスト」「バーミヤン」「ジョナサン」といった主力ブランドの約360店に電源コンセントが付いた一人客用のカウンター席を平均5~6席導入します。一人客用のカウンター席は、新規出店や業態転換、改装に合わせて導入されます。
一人客用のカウンター席を拡大するのは、新型コロナウイルス感染対策だけでなく一人で仕事などをするために来店する顧客のニーズに対応するためです。報道によると、ファミレスの1組あたり来店人数は、コロナ前から減少傾向にあったそうです。
そこですかいらーくHDは、2017年ごろから仕切りで囲った一人用ボックス席の導入を実験的に実施してきました。その結果、ファミレスで仕事をしたりネット検索をしたりする来店客が増え、女性の利用も目立つようになったそうです。
こうした実験を経て、すかいらーくHDは、個の空間を用意することが来店頻度を高めると判断し、一人客用のカウンター席の導入を拡大したようです。
ダイニングイノベーション傘下の焼肉ライクは、「おひとり様」向け焼肉店で知られた存在です。一人専用の無煙ロースターを置き、自分好みの焼き加減で食べる仕組みは独創的に思えます。
焼肉ライクは、2018年の開業当初から、年20~30店弱のペースで店舗網を拡大しています。最近は居酒屋から業態転換をしたいという問い合わせも増えているそうです。
日本ピザハットは、2021年1月からおひとり様専用セット「マイボックス」を販売しています。マイボックスは、Sサイズピザとフライドポテト、チキンナゲットをセットにしたもので、1年で180万セットを超える売り上げとなりました。
いわゆる外食においては、複数で来店し、食事だけでなく会話も楽しむのが、いわば常識とされていました。しかし新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけに、複数での外食が制限され、一人での食事という新しいスタイルが一気に普及しました。
WorkOnは2020年4月の1号店である新橋駅前店がスタートしましたが、新型コロナウイルスを想定して「お一人様専用」のコンセプトを提唱したわけではありません。「お一人様」にこだわったのは、静かな状態を快適と考える人がたくさんいることを重視したからです。静かな環境を用意するために、人々の会話によって静寂さがなくなることを恐れ、「お一人様専用」としました。
外食企業が、「お一人様」へのサービスを強化しているのは、おそらく「お一人様」へのニーズが高まっていると判断したからでしょう。一人用ボックス席を2017年(コロナ前)から実験的に続けてきたすかいらーくHDが、一人用ボックス席を増やしているのは、その証左のように思えます。WorkOnが、すこしずつではありますが、登録会員数が増加傾向を維持しているのも、ワークスペースにおける「お一人様」へのニーズが(新型コロナ以外の理由もあって)高まっているからのように思えます。
快適な環境を作り出す要素は、一つ一つをみると、決して特別なものではありません。むしろ当然のことばかりかもしれません。しかし、快適な環境を作り出す要素を一つの場所に集めると、そこには新しい価値が生まれると思っています。外食企業が「お一人様」へのサービスを強化するとしても、単に一人席を増やせばいいわけではなく、各企業が創意工夫をして、はじめてお客様に受け入れていただけると思われます。これはWorkOnにとっても同じです。
新しいワークスペースWorkOnは、従来型のワークスペースでもなければ、レンタルオフィス、シェアオフィス、バーチャルオフィス、カプセルオフィス、サテライトオフィス、ワーキングスペースでもない働く場所として、これからも皆様に貢献できるよう努力を続ける所存です。