働き方

労働者に好評の「在宅勤務」は新しい労働様式として本当に定着するのか

もしかしたら、在宅勤務の人気は、時間とともに落ちていくかもしれません。

就職・転職支援の日経HRは、「日経キャリアNET」登録会員を対象に「在宅勤務・リモートワーク」に関するアンケート調査(ビジネスパーソン700人調査)を実施しました。この調査は、2020年7月30日から8月7日に実施されており、在宅勤務に関する最近の考えが示されたものと言えそうです。

同調査によると、在宅勤務を経験したとの回答は76%。また調査時点(7月末~8月上旬)でも在宅勤務を続けているとの回答は97%と、在宅勤務を経験している方のほぼ全員が、現在(調査時点)でも在宅勤務を続けている結果となりました。

在宅勤務の経験者を対象に「在宅勤務の継続を希望するか」との問いに対し、「コロナに関係なく望む」が60%、「コロナが収まるまで望む」が28%となり、あわせて約9割が在宅勤務の継続を望む結果となりました。

在宅勤務により、通勤による(時間、肉体、精神)負担が減ったことや、通勤時間の削減で心に余裕ができ、仕事に集中できたり、家族と過ごす時間が長くなったことなどが、在宅勤務のメリットとしてあげられています。

緊急事態宣言が終了となり、人々の気持ちも落ち着きを取り戻した状況になったとはいえ、労働者の多くは、在宅勤務のメリットを実感し、在宅勤務を続けたいとの意向が強いままといえます。

興味深いのは、在宅勤務の継続を望む声が多い一方で、在宅勤務が仕事の効率化に(必ずしも)つながっていない、と考える人が一定数存在することです。コロナ前には在宅勤務ができると思っていなかった方を対象に、「在宅勤務と会社での勤務のどちらが仕事ができるか」との問いに対し、45%が「会社にいたほうが仕事ができる」と回答。そのうち約7割の方は、(それでも)在宅勤務の継続を望む回答をしたそうです。

このアンケート結果から、有識者などからは、労働者は、仕事のしやすさだけでなく、家族との過ごし方なども含めた生活全体を考慮して、在宅勤務を希望しているとの声が出ています。

労働者の立場からすれば、在宅勤務によって仕事が(多少)できなくなっても、通勤時間が削減されることなどによって心身ともにプラスの効果が見込まれるのであれば、在宅勤務を続けたいと考えなるのは無理もないことだと思います。

しかし労働者を雇う企業とすれば、在宅勤務によって仕事の生産性が低下してしまうことを無批判に受け入れるわけにはいきません。新型コロナウイルスの感染拡大で企業の財務状態は悪化しており、企業業績の先行き不透明感も強いままです。雇用調整助成金があるため、労働者を雇用し続けている企業は多いですが、今後、雇用調整助成金の特例措置がなくなるなど、行政からの雇用サポートが弱まれば、企業は労働者を減らす動きを強める可能性は否定できません。

じつは企業側は、すでに賃金を抑える動きを続けています。厚生労働省が公表する毎月勤労統計によると、一人当たり賃金(現金給与総額)は、4月から8月まで前年比マイナスで推移しています。内訳をみると、基本給(所定内給与)は前年並みで維持されているものの、残業代(所定外給与)やボーナスが前年から大きく減らされています。

在宅勤務は、会社内での勤務に比べ労働時間の把握が難しく、労働者が残業代を要求するのが難しいといわれています。あくまでも推測でしかありませんが、ホワイトカラーでの残業代の減少の一部は在宅勤務によるものかもしれません。この推測が正しいのであれば、在宅勤務を続ける労働者は、残業代の削減を通じて賃金・給与が伸び悩んだり、減少する恐れが高まるといえます。

ドライな見方かもしれませんが、企業が労働者に対し賃金・給与を支給するのは、労働者が経済価値を生み出すからです。在宅勤務により労働者が生み出す経済価値が以前に比べ小さくなるのであれば、企業は労働者に支給する賃金・給与を減らすのは自然のことといえます。

労働者は、通勤時間の削減といった生活全体を考えて在宅勤務を好意的にとらえているかもしれません。しかし、在宅勤務によって賃金・給与が抑制されたり、場合によっては減少してしまうようだと、在宅勤務に対する考え方が変わることも考えられます。

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