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しばらく続く都心マンション価格の上昇、幻想だった都心から地方への移住

 日経平均株価が2万6700円を超え、連日でバブル経済崩壊後の最高値を更新するなど株価の上昇が目立っています。ただ、価格が上昇しているのは株価だけでなく、都心のマンション価格も上昇が続いていることに注意を払うべきでしょう。

 東日本不動産流通機構(通称:東日本レインズ)が毎月公表する統計資料(月例速報 Market Watch サマリーレポート)によると、東京都区部の中古マンションの成約平米(㎡)単価は、10月には 82.31 万円/平米(前年比 4.3%上昇)と、6カ月連続で前年比プラスとなりました。

 都心マンションの価格上昇は、今に始まったことではなく、中長期の流れとなっています。2012年末(12⽉)と足元の期間(約8年間)における中古マンションの成約平⽶単価をみると、都心3区は約1.7倍上昇しています。

 興味深いのは、中古マンションの成約平米単価の上昇ペースは、都心から離れるほど緩やかになる点です。都心3区では約8年間で約1.7倍上昇した中古マンションの成約平米単価は、東京都平均では1.5倍、神奈川・埼⽟・千葉県では1.3倍に過ぎません。これは、1990年ころの(平成)バブル期やリーマンショック前のプチバブル期と⼤きく異なる現象です。中古マンション価格については、都心だけの局地バブルといってもいいのかもしれません。

 都心マンション価格は、株価などの資産価格や景気による部分もあるでしょうが、引き続き強含みで推移するとみられます。中古マンション在庫を見ると、都⼼では在庫が急速に減少しており、在庫物件を確保するために高値を提示する業者も少なくないようです。不動産業者へのヒアリングよると、相場からみて⾼めに思える物件価格のまま流通しているケースが増えているそうです。

 緊急事態宣言が発出され、在宅勤務が一気に普及したことで、今年の夏爆雷には、都市部の勤労者が地方に移動し、都市部(特に東京)の不動産価格は下落に向かうと予想する声がよく聞かれるようになりました。東京都の人口は、今年4月から9月にかけて5542人の転出超過となったことも、こうした見方を裏付けるデータとされました。

 しかし、東京都の転出人口を見ると、そのほとんどが外国人で日本人に限ってみると、東京から離れる人の数は限定的であることがわかっています。東京での人々の動きをみると、地下鉄やバスといった公共交通を利用する人数は、緊急事態宣言発出前とほとんど変わらない水準に戻ってきたように思えますし、3密を忌避する方々は、公共交通をできるだけ長時間利用しないよう、より都心に近い住宅や駅近に住宅を変える動きすら見せています。

 日本銀行をはじめとする世界の中央銀行は金融緩和姿勢を弱める姿勢を見せていませんし、米連邦制度準備理事会(FRB)においては金融緩和姿勢をむしろ強化する姿勢すら示しています。いわゆる金余りは、まだまだ続きそうです。

 東京に人々は住み続け、金余りも続くのであれば、都心マンション価格が下落に向かうと予想するのはやや無理があるように思えます。都心マンション価格が上昇することで、マンション購入をあきらめ、賃貸住宅に住み続ける都民も高水準のままと予想されます。

 東京での居住コストが上昇すると、いわゆる在宅勤務の動きも徐々に弱まる可能性も考えられます。在宅勤務のためには自宅に(疑似的な)オフィスを用意する必要がありますが、そのコストをかける余裕を見出すことが難しくなるからです。

 この場合、人々は、レンタルオフィス、シェアオフィス、バーチャルオフィス、カプセルオフィス、サテライトオフィス、ワーキングスペースといった外部オフィス施設をより多く利用するのかもしれません。

 こうした動きが予想されるためか、鉄道会社は、シェアオフィス事業を強化しています。JR東日本は、STATION WORK(ステーションワーク)というブランドで「駅ナカ」や駅付近のシェアオフィス事業を開始しています。東京メトロは、CocoDesk(ココデスク)というブランドで個室型ワークスペースを提供しています。

 シェアオフィス、レンタルオフィス、シェアオフィス、バーチャルオフィス、カプセルオフィス、サテライトオフィス、ワーキングスペースが普及することで、新しい働き方を選ぶ人も増えそうです。最近では、WAA(Work from Anywhere/Anytime)という言葉を目にすることが増えてきました。WAAは、働く場所や時間を社員が選べる新しい働き方です。会社内だけでなく、会社以外の場所(自宅、カフェ、図書館など)でも自由に働けるほか、働く時間も固定されず、働く人の判断で自由に変えられます。WAAであれば、小さいお子さんがいらっしゃる方は、慌てずに保育園や学校の送り迎えができ、リラックスした気分で集中して働くこともできますし、お子さんが寝た後に仕事を再開することもできます。

 働き方が変われば、レンタルオフィス、シェアオフィス、バーチャルオフィス、カプセルオフィス、サテライトオフィス、ワーキングスペースといったオフィスサービスの普及がさらに進むでしょう。WorkOnで登録会員や利用者が増えているのも、こうした流れを示すわかりやすい具体例なのかもしれません。


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