不動産サービス大手シービーアールイー(CBRE)は2021年2月、「オフィス利用に関するテナント意識調査2020」(2020年10~11月実施)の結果を公表しました。同調査は、
コロナ禍におけるリモートワークの現状を分析し、コロナ収束後のオフィスのあり方がどう変化するかについて考察したものです。
以前に同調査の結果をもとに、企業のオフィス面積や(シェアオフィス、コワーキングオフィス、レンタルオフィス、サービスオフィス、ワークスペース、カプセルオフィス等の)フレキシブルオフィスの利用状況に関するブログ記事をアップしました。
リモートワークの普及で企業はオフィス面積を大幅減少!? CBREによる調査から企業のオフィス面積とフレキシブルオフィスの利用状況の今後を考える
https://workon.biz/blog/post-741/
じつはCBREの調査レポートでは、企業のオフィス利用動向だけでなく、リモートワークにおける企業行動についても考察されています。
リモートワークによる生産性の変化に関する質問では、「生産性が上がった」とする回答割合が2020年5月時点では37%でしたが、同年10月時点には49%に上昇しています。CBREは、企業がコロナ禍を契機にリモートワークを導入したものの、2020年5月当時は、新しいツールや業務の進め方の変化への対応など、十分な準備を整える時間が足りない中での運用開始となったために、生産性が上がったという回答が低くなったと考察しています。その後、企業はリモートワークに慣れてきて、同年10月には生産性が上がったとする回答の割合が高まったとも考察しています。
興味深いのは、2020年5月、同年10月ともに、リモートワークで「生産性が下がった」とする回答が、5割以上存在することです。リモートワークによる生産性の変化については、見方が二分されていることは、企業のオフィス需要にも影響を及ぼしているように思われます。
リモートワークで感じられたメリット、という質問では、回答の上位3項目が、「通勤に伴う負担軽減」、「育児・介護との両立」、「ワークライフバランス」となりました。ただ、こうしたメリットは、いずれも従業員にとってのメリットであり、業務に直結したメリットではありません。この傾向は、CBREによる調査だけでなく他調査でも同様の結果となっています。
一方、リモートワークを実施する上での課題、という質問では、「従業員同士のコミュニケーション」、「部下・チームマネジメント」、「捺印」、「心身の健康管理が難しい」、「通信環境」が回答の上位になっています。中でも、「コミュニケーション」、「マネジメント」、「心身の健康管理」といった項目は2020年5月時点の調査結果に比べて急増しています。リモートワークが続くことで、在宅勤務による運動不足のほか、コミュニケーション不足に伴う信頼感・安心感の欠如や、孤立感を感じる従業員が増加していることが背景にあるとCBREは考察しています。
またCBREは、回答割合が急増した「コミュニケーション」や「マネジメント」と共通しているのは、「人との繋がりの希薄化」に起因すると指摘しています。そしてCBREは、リモートワークが普及したことで、改めてオフィスの役割が考え直されており、コミュニケーションを始めとする「人との繋がり」は、オフィスで行われることが最も効果的であると多くのテナントが考えていることが確認されたとしています。
この見方は、今後のオフィスの重要性、という質問に対する回答にも表れています。回答を見ると、オフィスの「重要性は高まる」が26%、「現在と変わらない」が43%となり、回答者の約7割が、オフィスは少なくとも従前どおり「重要である」としています。リモートワークの普及により企業のオフィス需要は急減するとの見方が、コロナ禍の初期には広まりました。しかし、企業は従業員間のコミュニケーションやマネジメントの重要性も認識しており、コミュニケーションやマネジメントといった人の繋がりを維持するためには、オフィスは維持すべきと考えていることが推察されます。今後、リモートワークは定着するでしょうが、それでも企業はオフィスを維持することになります。
CBREはオフィスの未来を考えるために、オフィス面積を増やす予定の企業(増床予定企業)を対象に新設・拡張を予定しているスペースの用途を質問しています。回答の上位にあがったのは、「1人で電話やWEB会議を行うためのスペース」、「高度な集中を必要とする、1人で作業を行うスペース」でした。いずれも「1人」のためのスペースを用意するというもので、新型コロナウイルス感染対策や従業員が集中する場を用意するといった考えが反映された結果と考えられそうです。ちなみに「1人」や「集中」を重視するのはWorkOnのコンセプトでもあります。
ただ、その次の項目は、
グループでコラボレーションし新たなアイデアを生み出すためのスペース
同僚と緊密に協力して作業を行うためのスペース
同僚とカジュアルな会話をするためのスペース
多目的スペース・レクリエーションスペース
と、いずれも従業員間のコミュニケーションを強化するものがあげられています。
オフィス内の執務スペースの形態に関する質問では、現時点では「全部固定席」の回答割合が61%ですが、今後の予定では27%に急減しています。代わりに「フリーアドレスと固定席環境が混在するハイブリッド型」が現在の22%から34%に上昇し、「ABW環境と固定席環境が混在するハイブリッド型」が現在の3%から今後は11%へ、「全席フリーアドレス」が現在の3%から今後は8%へ、「ABW型」が現在の4%から今後は12%へと、それぞれ上昇しています。
※ABW型
アクティビティ・ベースド・ワーキング型。仕事内容に合わせて、最適な場所を働く人が自分で選ぶことができるワークプレイス。業務内容に合わせた多様なスペースが用意されている。
CBREは、コロナ禍を契機にリモートワークの導入が進み、オフィス内に在席するワーカー数は流動的になっていると指摘しています。そしてCBREは、全てが固定席のままではスペースを有効に活用しきれないという事情もあるだろうが、これは、コロナ禍による一過性の現象ではなく、中長期的な働き方の変化であることを前提に、企業がそのような変化をさらに促進しようとしていることを、調査結果は物語っていると整理しています。
WorkOnとしては、(シェアオフィス、コワーキングオフィス、レンタルオフィス、サービスオフィス、ワークスペース、カプセルオフィス等の)フレキシブルオフィスを利用する傾向が強まるだけでなく、企業が用意するオフィスでも全席固定のスタイルからフリーアドレスやABW型にシフトしつつある様子を歓迎しています。オフィスに関する企業の姿勢が変わることで、従業員のオフィスに対する考え方が、より柔軟(フレキシブル)なものを好むようになれば、結果としてWorkOnに対する需要も高まると期待されるからです。
WorkOnは、高まる期待にきちんと応えるべく、従来型のワークスペースでもなければ、レンタルオフィス、シェアオフィス、バーチャルオフィス、カプセルオフィス、サテライトオフィス、ワーキングスペースでもない新しい働く場所として努力を続ける所存です。