新型コロナウイルスは、我々の経済を大きく変えました。経済はお金を通じて我々の生活を支えます。その経済が変わったということは、我々の生活も変わることになります。
わかりやすい一例が仕事でしょう。外出自粛や店舗の休業要請は、人々から多くの仕事を奪い取りました。いづれ、いくつかの店舗は再開されるかもしれませんが、これを機に閉店する店舗も少なくないでしょう。この結果、店舗の仕事は少なくなります。
一方で、外出自粛などで家の中で過ごす方が増え、それに伴い別の仕事が増えています。外で買い物をする代わりにECサイトで買い物をすることが増え、ECサイトに関する仕事は増えたでしよう。ECサイトで買ったものを家まで運んでくれる宅急便の仕事も増えています。
ある仕事が減る一方で、別の仕事が増えるという変化に対し、人々はすばやく対応できるわけではありません。飲食店で働いていた方が、次の日から宅配便の仕事をするのは、なかなか大変です。できたとしても、飲食店で培った知識や経験を宅配便の仕事で活かすことは難しく、飲食店と同じ働きを見せるとは期待できません。飲食店の仕事から宅配便の仕事に変わった人は、誰であっても、宅配便の仕事に慣れるまで、ある程度の時間が必要です。
変わってしまった経済に対応したくても、人は対応するために時間をかける必要があります。そのため、対応できるまでの間、誰もがタイムラグを受け入れなければなりません。そのタイムラグの間、仕事をしたくても仕事ができない、もしくは、仕事を見つけることができない人もいらっしゃるでしょう。
以前ですと、仕事をしたくてもできない/みつけられない方のために、政府は公共事業を増やすことで、人々に仕事を与えていました。公共事業に関する仕事の多くは土木作業です。肉体面で健康であれば、土木作業に関する知識や経験が少なくても、多くの人は土木作業になんらかの貢献ができます。
しかし、いわゆる高齢化によって、肉体面で健康を維持している方は少なくなり、土木作業の担い手は減っています。仮にできたとしても、肉体面での苦痛を理由に、土木作業を嫌がる人も増えているように感じます。
このためか最近の政府は、仕事をしなくても生活ができるよう、お金(もしくは買い物券)を支給するようになっています。これなら高齢化が進んでも、経済の変化に人々が対応できるまで、時間が稼げそうです。
ただ、4月末に成立した特別定額給付金が1人当たり10万円に過ぎなかったように、政府が配れるお金は限定的です。家を借りている一人暮らしの方だと、10万円だけで何ヶ月も生活するのは大変です。
そんな現実を根拠に、一部の方からは、政府はもっとお金を支給すべきだ、という主張が生まれています。支給されるお金は、国債を発行し、中央銀行である日本銀行が買い取ることで用意できる、と主張される方もいます。
ニュースなどを見る限り、こうした主張がすぐに現実のものになることはなさそうです。ただし、人々の生活のために政府はもっとお金を使うべきとの主張は、少しずつ支持を集める可能性はあります。
政府がお金をより多く使うことで、人々の生活を守るという動きが強まると、仕事をしたくてもできない/みつけられない人の一部が、仕事をしたくない/このままでよい、という人に変わってしまうような気もします。
仕事をしないで政府の支援でそのまま生きられれば良い、という状態が良いことなのか悪いことなのかは、人それぞれが持つ価値観に依存します。ただ、良いか悪いかは別にして、仕事をしない人が増えるのに、政府からの支援で生活のために買い物をする(消費をする)ことが自然な社会は、たとえ不況が続いたとしても物価が上がりやすくなり、政府の支援があっても生活が苦しくなることは覚えておいて良いでしょう。