新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの生活、働き方、考え方などを変えるきっかけとなりました。働き方では、在宅勤務、テレワーク、リモートワークが一気に普及し、働く場所を1つに限定せず、複数の場所で働く考え方も広がっているように思えます。
最近では、WAA(Work from Anywhere/Anytime)という言葉を目にすることが増えてきました。WAAは、働く場所や時間を社員が選べる新しい働き方です。会社内だけでなく、会社以外の場所(自宅、カフェ、図書館など)でも自由に働けるほか、働く時間も固定されず、働く人の判断で自由に変えられます。WAAであれば、小さいお子さんがいらっしゃる方は、慌てずに保育園や学校の送り迎えができ、リラックスした気分で集中して働くこともできますし、お子さんが寝た後に仕事を再開することもできます。
働き方が変わったことで、レンタルオフィス、シェアオフィス、バーチャルオフィス、カプセルオフィス、サテライトオフィス、ワーキングスペースといったオフィスサービスの存在感が高まったように思えます。まだまだ小さい存在でしかないWorkOnで(少しずつですが)登録会員や利用者が増えているのも、オフィスサービスの存在感が高まった一例と思われます。
働き方が変わると、働く方の意識も変わるのが自然です。ランサーズの「在宅勤務推奨時における副業・複業者のサービス利用状況調査」によると、副業をする方のうち約3割は新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2月以降に副業を始めたと回答したそうです。副業を始めた理由は、「収入減少」、「スキルアップ」、「1社を頼る働き方が不安」の回答割合が高かったそうです。
副業は、働く人だけでなく企業にとってもメリットがあるかもしれません。新型コロナウイルスの感染拡大で業績が大きく悪化した企業は、これまでと同じように従業員を雇用し続けるのが難しいかもしれません。しかし従業員に副業を認めることで、給与の一部を他企業に負担してもらう、という考え方も成り立つように思えます。
他企業の従業員を活用することで、人手不足の解消を試みる企業もあります。食品物流大手のムロオは、新型コロナの影響で仕事が激減したタクシー会社や観光バス会社と運転手のワークシェアをしています。タクシー会社である日の丸リムジンのタクシー運転手11人をムロオの物流拠点に招き、トラック配送などを任せているそうです。タクシー運転手は、日の丸に在籍したままムロオで副業する形となり、給与はムロオ側が支給します。また、神姫バスグループの神姫観光は、観光バスや高速バスの運行が止まった3月から、従来は禁止していた副業を一時的に認めることにしています。乗務員の3分の1にあたる約80人が副業を届け出て、コンビニや建設、物流などの業種で働いているそうです。
副業が一般的なものになりつつあることから、行政も副業に関するルールを変えようとしています。厚労省は8月中に副業・兼業の新たな指針を公表し、働く人に本業と副業それぞれの勤務先に残業の上限時間を事前申告するよう求めると報じられています。
例えば、月の残業時間の規制上限が80時間の場合、本業のA社で50時間、B社で30時間などと決め、それぞれの会社に伝えます。A社は申告された残業時間の上限を守れば、仮にB社での残業時間が規制の上限を超えても責任を問われません。これによりA社は、副業先(B社)での労働時間が把握しづらくても、社員の副業を認めやすくなると期待されます。
実際には、従業員の健康管理、業務に対するコミットメントの弱まり、機密情報の漏洩リスクの高まりなどがあって、従業員の副業に対し消極的な企業もまだまだ多いと思われます。しかし、働き方が変わり、それに伴い働く方の意識が変わってしまった以上、副業が一般的なものになる流れが止まることはないでしょう。