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ビットコインは700万円に!WeWorkが暗号資産決済を始めた理由を考える

 起業家向けのシェアオフィスやコワーキングスペースを提供する米大手企業のWeWork(ウィワーク)は4月20日、仮想通貨決済サービスを提供しているBitPay(ビットペイ)との提携を通じて、オフィススペース貸出料の支払い手段として暗号資産(旧称・仮想通貨)を受け入れることを発表しました。

 ウィワークへの支払いに利用できる暗号資産は以下の通りです。

・ビットコイン(Bitcoin/BTC)

・イーサリアム(Ethereum/ETH)

・USDコイン(USD Coin/USDC)

・パクソス(Paxos/PAX)

 ウィワークは、支払いで受け取った暗号資産を現金化することはせず、財務資産として保有することも報告しています。また、家賃や他企業への費用の支払いにおいて、暗号資産取引所であるCoinbase(コインベース)が対応しており、受取企業が了承するのであれば、仮想通貨で支払う意向も表明しています。

 コインベースは、ウィワーク顧客の代表的な大手企業で、米国株市場に上場した米国最大の暗号通貨取引所です。ウィワークは、コインベースがウィワークへの会員費(家賃)を暗号資産で支払う最初の顧客であることも明らかにしています。

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https://www.wework.com/ja-JP

 ウィワークは、世界118都市、747拠点で展開するシェアオフィス・コワーキングスペースです。コミュニティ型ワークスペースをコンセプトに、快適性や利便性、発展性のある空間を提供しています。日本には2018年1月に進出し、現時点で55拠点あります。すごいですね。

 ウィワークが提供するオフィスは、ホットデスク、専用デスク、プライベートオフィスの3種類です。ホットデスクは、いわゆるシェアオフィスで、空いている席を利用する形態です。利用料金は、38,000円から91,000円とエリアや施設によって異なります。専用デスクは、固定席があるシェアオフィスです。プライベートオフィスは、1人から利用でき、250人規模まで拡張が可能です。費用を支払えば、1フロアでの利用など細かいカスタマイズもできます。

 ウィワークは、通常のオフィスのほかに、会議室、(防音)電話ブース、半個室のブース室、イベントスペースなど様々な施設が用意されています。また、ウィワークは、SNSアプリなどを通じて他利用者とコミュニケーションをとることができる工夫もしています。なお、ウィワークにはフリードリンクとしてビールも用意されていることは有名です。

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https://www.wework.com/ja-JP/buildings/kamiyacho-trust-tower--tokyo

 ウィワークが、暗号資産で利用料金を受け取る背景には、暗号資産の価格上昇期待があります。暗号資産の代表的な存在であるビットコインは、昨年4月には70万円台でしたが、5月には100万円を突破。10月には120万円、11月には150万円、12月末には300万円をそれぞれ突破しました。今年に入ってもビットコインの上昇は止まらず、2月に500万円を突破し、今月(4月)には一時700万円に達しました。昨年4月からの1年間でビットコイン価格は10倍になったことになります。

 ビットコインは、時間とともに発行量(供給)が少なくなる仕組があります。一方、カナダでビットコインETFが発行され、米証券取引委員会(SEC)がビットコインETFの審査を開始するなど、金融業界でビットコイン需要が高まっており、今後も高まり続けるだろうとの見方が有力です。ビットコインの需給が引き締まる方向に推移するのであれば、ビットコイン価格は上がり続けると予想されます。

 ウィワークは、ビットコインなどの暗号資産価格が今後も上昇するだろうと判断し、収入の一部を暗号資産として保有することを決めたのかもしれません。受け取った暗号資産を現金化せず、暗号資産のままで保有することは、事実上、暗号資産に投資することになります。

 収入を暗号資産で受け取る動きはウィワークだけではありません。米大手電気自動車(EV)メーカーTesla(テスラ)は3月24日、暗号資産ビットコインによる支払いに対応したことを発表しました。ビットコイン決済が可能な地域は、現時点では米国本土のみですが、今後は新たな市場への展開も検討していくとテスラは説明しています。米大手雑誌のTIMEは4月19日に、Crypto.comとの提携を通じて、暗号資産決済に対応したことを発表し、支払いで受け取った暗号資産を暗号資産のまま保有し続ける意向を表明しています。こうした動きは、暗号資産の価格上昇を期待したものと解釈することができそうです。

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https://www.wework.com/ja-JP/enterprise

 ウィワークが暗号資産で利用料金を受け取る別の背景として、ウィワークが新規株式公開(IPO)できそうだ、という点もあるかもしれません。ウィワークは3月26日、特別買収目的会社(SPAC)と合併し、米株式市場に上場すると発表しています。ウィワークは、約2年前にIPO計画が中止に追い込まれましたが、(ようやく)上場できることになりそうです。

 各種報道によると、ウィーワークの時価評価は90億ドル(9900億円)程度と評価されており、上場会社の私募増資(PIPE)という手法による8億ドルを含めて13億ドルを調達するとみられています。

 ウィワークは、現時点でも黒字化できていません。2020年の利払い・税・償却前損益(EBITDA)は18億ドルの赤字で、2021年も9億ドルの赤字が見込まれています。仮にウィワークが上場などを通じて資金調達ができないのであれば、資金繰りは厳しいままと言え、収入の一部を暗号資産として保有する余裕はありません。しかし上場などで資金調達ができるのであれば、暗号資産を保有しても資金繰りを心配する必要性が低下します。

 WorkOnは、ウィーワークのように暗号資産を使った支払いを受け付ける予定はありませんが、クレジットカードだけでく、スマホ決済アプリを使った支払いや、交通系ICカードを使った支払いなど、決済手段を多様化したいと考えています。ただウィワークのように潤沢の資金やスタッフがあるわけでなく、決済手段の多様化の道のりは長くなりそうです。WorkOnの新たな試みに期待されている方に対しては、申し訳ない気持ちを持ちながらも、多くの方々に貢献できるように努力を続ける所存です。

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