日本経済新聞は9月21日、米シェアオフィス大手ウィーワークの日本法人(ウィーワーク・ジャパン)が出店戦略を見直すと報じました。報道によると、ウィーワーク・ジャパンは、これまで、シェアオフィスとして利用するビルを賃借していましたが、賃借せずに運営のみを受託する手法を2022年に導入する検討に入ったそうです。
ウィーワーク・ジャパンは、ビルを賃貸せず運営のみを受託すると、売上高は減少するものの、賃料負担が軽くなるので初期費用が軽減されます。日本国内で38カ所のシェアオフィスを運営するウィーワーク・ジャパンは、初期費用を軽くすることで新規出店を積極化させる意向を示しています。
シェアオフィス事業者が、ビルなどのインフラを用意せず、運営のみを受託する手法は、高級ホテルでも採用されています。高級ホテルの場合、施設運営のノウハウを有しているほか、ホテルのブランドを活用することで集客コストを低下させることが期待されるからです。ウィーワーク(WeWork)というブランドは、日本でも認知が広がっていることから、ウィーワーク・ジャパンが運営のみを受託するのは合理性が高いように思えます。
ウィーワーク・ジャパンが運営のみを受託する手法を検討した背景には、国内シェアオフィス市場での競争激化もあります。「ワークスタイリング」というブランドでシェアオフィスサービスを展開する三井不動産は、2020年3月時点で約50カ所だった自社のシェアオフィスを2022年3月までに150カ所以上に増やす計画です。「H1T」や「H1O」のブランドでシェアオフィスを提供する野村不動産は、2027年度に拠点数を150にする方針です。
一方、ウィーワーク・ジャパンの日本での拠点数は38カ所と競合他社に比べ少なく、このままだと、ブランド認知の広がりが止まる恐れも考えられます。また初期費用の重さを理由に新規出店が滞ってしまうと、業績の拡大も期待しにくくなります。報道によると、ウィーワーク・ジャパンのジョニー・ユーCEOは、運営のみを受託する手法をつかって拠点数を100~200拠点規模まで増やす意向を示しています。
国内でも積極的に賃貸契約をしていたウィーワーク・ジャパンが、運営のみを受託する手法を中心にすると、オフィスビルの需給がさらに悪化する可能性もありそうです。すでに都心5区のオフィス空室率は、供給過剰の目安となる5%を7カ月連続で上回っています。このまま5%超の空室率が続くと、オフィス賃料の下落も続きそうです。
WorkOnは、ウィーワーク・ジャパンと異なり、現時点では運営のみを受託する手法を採用していません。ウィーワーク・ジャパンと異なり、WorkOnはブランドが確立できているわけではありませんので、自らの力で少しずつWorkOnを広げていくしかありません。
ただ、オフィスビルの賃貸料がさらに下落すれば、小規模零細事業者でしかないWorkOnにもいい意味でのチャンスがやってくるのではないかとも期待しています。そのときに備え、WorkOnは、新しいワークスペースを提供するものとして、従来型のワークスペースでもなければ、レンタルオフィス、シェアオフィス、バーチャルオフィス、カプセルオフィス、サテライトオフィス、ワーキングスペースでもない働く場所として、そして従来型の貸し会議室、ミーティングルーム、サロン、スタジオ、イベントスペースとは違う予約ルームという形式で、皆様に貢献すべく、努力を続ける所存です。