シェアオフィス

歴史的建造物「堀ビル」のシェアオフィス化をビジネスとして考える

 竹中工務店は2021年4月からJR新橋駅近くにある「堀ビル」をシェアオフィスとして運用すると報じられています。報道によると、このシェアオフィスは約20室を擁し、スタートアップ企業などに貸し出されるそうです。

 堀ビルは、1930年(昭和5年)に堀商店本社ビルとして着工され、1932年(昭和7年)12月に竣工。東京都港区の外堀通りに面しており、鉄筋コンクリート造の地上4階・地下1階建のビルです。昭和初期に多く見られた折衷様式オフィスビル建築の典型とされています。現在は国の登録有形文化財に指定されています。

 堀ビルは、外堀通りとレンガ通りの交差点に位置しており、正面外観はゆるやかな曲面を描き、青銅製の両開き扉が備え付けられています。外壁はひっかきキズをつけたスクラッチタイル貼りで、このタイルは英国から輸入されたそうです。

 設計は公保敏男、施工は安藤組(現安藤建設)と言われていますが、実際の設計者は、国会議事堂設計チームの中心であり神宮外苑の絵画館なども手がけた小林正紹であったという説が有力視されています。

 報道によると、竹中工務店は、堀ビルの所有者である堀商店の堀信子会長と建物のリース契約を結んだとのこと。シェアオフィスとしての運営は、賃貸物件の改修や仲介を手掛けるgooddaysホールディングスが担うそうです。

 堀ビルに限らず、歴史的建築物は、固定資産税や相続税などが重荷になり、保有し続けるコストは大きいのですが、竹中工務店は建物自体をオフィスなどとして活用し、維持費などをまかなう仕組みづくりをめざすそうです。

 じつは竹中工務店は、歴史的な建築物の商業利用によって、建物を保存する事業を手がけています。同社は2018年に、東急などと共同で、文化財指定されている邸宅をビジネススペースとして開業しています。今回の堀ビルのシェアオフィス化は、竹中工務店による歴史的建物の運用ノウハウの蓄積の一環と位置付けられているようです。

 堀ビルのシェアオフィスが、具体的にどのような形になるかはわかりませんが、シェアオフィスにすることで保有コストがカバーできるとの見方がないと、事業化されなかったはずです。言い換えると、シェアオフィスやワークスペース、レンタルオフィス、バーチャルオフィス、カプセルオフィス、サテライトオフィス、ワーキングスペースといった事業は、大手ゼネコンも認めるほど、(それなりに)有力な事業とみなされていると考えることもできます。

 自宅、オフィスを使い分ける働き方が増えると同時に、自宅でもなくオフィスでもない場所で働く、という新しい選択肢も増えつつあるように感じます。新しいワークスペースWorkOnは、従来型のワークスペースでもなければ、レンタルオフィス、シェアオフィス、バーチャルオフィス、カプセルオフィス、サテライトオフィス、ワーキングスペースでもない働く場所として、これからも皆様に貢献できるよう努力を続ける所存です。


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