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新幹線がワーキングスペース!? JR東日本が「シェアオフィス事業」を推進する理由

 JR東日本とKDDIは12月15日、新幹線の車両をテレワークオフィスとして活用する「新幹線ワークプレイス」構想を発表しました。報道によると、JR東日本は、東北新幹線車両の一部に「リモートワーク推奨車両」を試験的に導入する実証実験を開始。リモートワーク推奨車両には専用の通信回線が引かれます。KDDIが公開した車内のイメージ画像によると、リモートワーク推奨車両は、通常よりゆったりした座席やテーブルなどが描かれており、飛行機のビジネスクラスのようにも見えます。

 JR東日本とKDDIは、リモートワーク推奨車両を試験的に提供し、利用者のニーズを探るとしています。実証実験では通話などが制限されず通常の職場同様に仕事ができる状態を用意するそうです。また、利用者から働く機能としての要望を聞き、多くの利用者が同時にインターネットを使うことでネットワーク上の問題が起きないかといった技術面を検証した上で、車両の一部を改装し、専用車両を開発するかどうかも検討するそうです。

 現在、新幹線車両でも携帯電話は通じ、JR東日本が提供する新幹線には「JR-EAST FREE Wi-Fi」という携帯電話の電波を利用した無料公衆無線LAN(Wi-Fi)サービスも用意されています。しかし、新幹線内で携帯電話を使う際には、自席ではなくデッキに移動することがマナーとされており、ZoomやTeams、Google MeetなどのツールでWEB会議(オンラインミーティング)を新幹線の自席ですることは、マナー違反とみなされるでしょう。しかし、この実証実験では、リモートワーク推奨車両であればWEB会議(オンラインミーティング)や、車内でのミーティングもOKとされるかもしれません。

 JR東日本とKDDIは、場所や時間にとらわれない暮らしを作る「空間自在プロジェクト」の実現に向けた基本合意書も締結しました。JR東日本が2024年の街開きを目標に進めている品川開発プロジェクトを中核として、JR東日本はKDDIと共同で分散型スマートシティに関する共同事業を実施するという構想です。

 高輪ゲートウェイ駅を玄関口とする品川開発プロジェクトでは、5Gを前提とした最先端の通信インフラとサービスプラットフォームをJR東日本とKDDIが提供します。そして両社は、交通と通信の技術を生かし、高輪ゲートウェイ駅周辺の開発やIT環境が整ったサテライトオフィスの開設をする計画です。

 また両社は、分散拠点として都市周辺や日本各地に分散型ワークプレイスを開発する意向を持っています。来春以降に東京、神奈川、埼玉、千葉エリアを対象として、多拠点とつながる分散型ワークプレイスのトライアル拠点を開設し、実証実験を実施するそうで、新幹線ワークプレイス構想も、その一環と位置付けられています。

 じつはJR東日本は、以前からシェアオフィス事業に力を入れています。同社は、電源(コンセント)とWi-Fiを完備した成田エクスプレス用の車両を両国駅に停車させ、列車内をテレワークオフィスとして開放するという実証実験を11月27~28日に実施しました。また、STATION WORK(ステーションワーク)というブランドで「駅ナカ」や駅付近のシェアオフィス事業を開始しています。

 STATION WORK(ステーションワーク)には、STATION BOOTH(ステーションブース)とSTATION DESK(ステーションデスク)の2種類があります。STATION BOOTH(ステーションブース)は、いわゆる個室タイプで、幅と奥行きがそれぞれ1メートル強、高さが2.2メートル程度のボックスが、「駅ナカ」や駅改札近くに設置されています。ボックスの中には、椅子、机、電源コンセント、エアコンのほか、液晶モニター、Wi-Fiによる通信環境が用意されています。利用料金は15分250円で、事前に利用時間を予約して使います。

 JR東日本がシェアオフィス事業に力を入れているのは、既存の交通事業に限界が見えてきたことで、交通事業の高付加価値化を目指しているためと思われます。在宅勤務の普及で、労働者は通勤のために電車を使う必要が減っただけに、JR東日本としては、これまで以上のペースで新事業を推進する必要性が高まったといえます。

 新型コロナの感染拡大をきっかけに、在宅勤務やテレワークが普及したものの、通信環境の悪さや家族の存在などにより、自宅でテレワークやリモートワークをすることが難しい方も多く、自宅近くのレンタルオフィス、シェアオフィス、バーチャルオフィス、カプセルオフィス、サテライトオフィス、ワーキングスペースを利用する方が増えています。自宅から比較的近い郊外の駅にレンタルオフィス、シェアオフィス、バーチャルオフィス、カプセルオフィス、サテライトオフィス、ワーキングスペースを設置すれば、自宅で働きにくい労働者のニーズをつかむことができるとJR東日本は判断したのかもしれません。


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